ヒロメの生態
- ヒロメは一年生の海藻で、田辺湾では早ければ12 月に1cm程の芽が出てきます。3月には大きなもので80㎝にもなり、 4 月頃には種(遊走子)を放出して枯れていきます。夏場は肉眼では見えない小さな配偶体と呼ばれる世代で存在しています。
一般的には水深2 ~ 8m の岩場に着生すると言われていますが、条件によっては更に深くても生育は可能です。
地形的には波が穏やかで潮通しの良い場所に多く見られます(弱内湾性)。
ヒロメの分類
海藻類は世界におよそ25,000種、日本にはおよそ1500種もいると言われています。これらの海藻類は大きく緑藻類、褐藻類、紅藻類に分けることができます。身近な海藻を挙げれば、アオサやアオノリ、クビレヅタ(海ぶどう)などは緑藻類、コンブ、ワカメ、モズクなどは褐藻類、スサビノリ(海苔)、マクサ(天草:トコロテンの原材料)、トサカノリなどは紅藻類です。
ヒロメの分類学的位置づけはコンブ目チガイソ科ワカメ属となっていますが、これは大きなくくりではコンブの仲間で、ワカメとは近縁種です。
分類学上の位置
褐藻綱 PHAEOPHYCEAE
コンブ目 LAMINARIALES
チガイソ科 Alariaceae
ワカメ属 Undaria
ヒロメの体のつくり
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- 葉状部:
- 地域や生育環境によって形は卵形や披針形など様々。
生長すると全体的にシワが生じる。
- 中肋:
- 葉の中央にある芯の様な部分。
葉が広がるように支えている。
- 子嚢斑:
- 3 月末頃から肉厚になる。
遊走子(いわゆる胞子)を作る場所。
ワカメではメカブに当たる。
- 生長点:
- この辺りが盛んに細胞分裂して生長する。
- 茎:
- 円柱~扁平状。生長すると縁に波状のひだができることもある。
- 仮根(付着器):
- 岩などに付着するための根の様な形の部分。
ヒロメの生活史
海藻類には、雌雄の区別が無い胞子体と、雌雄の区別ある配偶体と呼ばれる2 つの世代が存在し、胞子体から配偶体が生まれ、配偶体から胞子体が生まれるという世代交代を行っています。(種類によっては非常に複雑です)
ヒロメを含むコンブの仲間では、私たちが普段目にしているのは胞子体と呼ばれる世代です。以下はヒロメについて説明します。
胞子体は春に遊走子(胞子のようなもの)を放出します。遊走子は一定時間泳ぎ回り、岩場などに着生すると配偶体を生じます。
この配偶体には雌雄があり、それぞれ独立して育ち、夏を過ごします。
冬が近づき水温が下がってくると、メスの配偶体は卵を、オスの配偶体は精子を造り、これらが受精すると胞子体が生じます。
ヒロメやワカメはこのように1年で一周回る生活史をもっています。